5つ以上の心配事がある状態が続くと、人は気分を害しやすくなる
武田氏の語るリサイクルの本質的な問題点は何で、それは人々の幸福感とどのように関連するのだろうか。
武田氏が語るリサイクルの本質的な問題点は、単に資源の有効活用という視点だけでなく、現代社会におけるリサイクルの実態が資源効率の向上に必ずしも繋がらず、むしろ人々の幸福感を損ねている可能性があるという点にあります。
具体的には、以下の点が問題として挙げられています。
資源効率の悪さ: 武田氏は、リサイクルには資源の輸送や再処理に多大なエネルギーが必要であり、場合によっては回収される資源の価値よりも多くの資源を投入してしまうことがあると指摘しています。例えば、2億トンのリサイクル可能なものが回収されても、リサイクルには7億トンの資源が必要となり、結果として5億トンの資源が余計に消費される可能性があると述べています。
リサイクル率の誤解: 現在の法律では、リサイクル工場に廃棄物が持ち込まれた時点で「リサイクルした」と認定されるため、実際に資源として再利用されているかどうかは問われません。60%のリサイクル率という数字は、60%がリサイクル工場に運ばれたことを意味するに過ぎず、その後の処理や再利用の状況は不明確であると指摘しています。実際には、リサイクル工場に運ばれても焼却されるケースもあるようです。
有害物質の問題: 現代の工業製品には多種多様な有害物質が含まれており、リサイクル過程でこれらを完全に除去することは困難であると述べています。以前は焼却時に水銀などが回収されていたものの、リサイクルが推進されるようになってから回収率が低下している例も挙げられています。
官僚の甘えと利権の発生: リサイクルに関する法制度が、実際のリサイクルを促進するものではなく、官僚や学者の利権を生む温床となっていると批判しています。リサイクルしなくてもリサイクルと呼ぶ法律が存在し、リサイクル工場への税金投入によって非効率なシステムが維持されていると指摘しています。
人々の幸福感への影響: 武田氏が最も重要視しているのは、リサイクルが特に主婦層の心理的な負担を増やし、幸福感を損ねているという点です。ゴミの分別や回収日の管理など、本来必要のない多くの思考や心配事が増えることで、精神的なストレスとなり、気分が落ち込む原因になり得ると説明しています。医学部の友人の話として、心配事が5つ以上になると人は気分が落ち込みやすいという知見を紹介し、リサイクルに関する煩雑さがこの心配事の数を増やしている可能性を指摘しています。男性に比べて女性の方が鬱になる人が多いのは、リサイクルを含めた多くの家事や育児に関する心配事を抱えやすいからではないかと推測しています。
武田氏は、資源問題や効率性も重要ではあるものの、人々の生活を明るくし、心配事を減らすことの方がより重要であるという観点から、現在のリサイクルのあり方に疑問を呈しています。そのため、ゴミの分別を簡略化したり、回収頻度を増やしたりすることで、人々の精神的な負担を軽減するべきだと主張しています。
リサイクルが社会に関心を持たれた初期の背景は何か。
武田氏によれば、リサイクルが社会的な関心を集めるようになった初期の背景には、主に以下の二つの要因があったとされています:
1972年の石油危機: 1972年に「石油が30年でなくなる」という予測がなされ、社会全体が資源の枯渇に対して大きな危機感を抱いたことが、リサイクルに関心が集まるきっかけの一つとなりました。実際にはその予測は誤りであったことが後に判明していますが。
資源有限説: 地下に眠る資源は有限であり、人間の無尽蔵な消費によっていずれ枯渇するという考え方が広まったことも、リサイクルへの関心を高める要因となりました。ただし、武田氏はこれについても、現在の技術や資源の埋蔵量を考慮すると、理論的には数百万年程度の寿命がある資源も多く、文化的な視点と理科的な視点での捉え方の違いがあると指摘しています。
このように、資源の枯渇という危機感が、リサイクルが社会的な関心事となる初期の重要な背景にあったと言えます.
社会的関心となったリサイクルの経緯とは。
社会的関心となったリサイクルの経緯について、武田氏の語る内容とこれまでの会話を踏まえて説明します。
リサイクルが社会的な関心を集めるようになった初期の背景には、主に以下の二つの要因があったとされています [You]。
1972年の石油危機: 1972年に「石油が30年でなくなる」という予測がなされ、社会全体が資源の枯渇に対して大きな危機感を抱いたことが、リサイクルに関心が集まるきっかけの一つとなりました [1, You]。武田氏は、この時大騒ぎになったと述べています。しかし、実際にはその予測は誤りであったことが後に判明しており、2002年になくなっているはずの石油は、2023年現在も使用され続けていると指摘しています。
資源有限説: 地下に眠る資源は有限であり、人間の無尽蔵な消費によっていずれ枯渇するという考え方が広まったことも、リサイクルへの関心を高める要因となりました [1, You]。武田氏は、有限のものを掘り出せばいつかはなくなるのは確かだが、現在の使用量から理論計算すると、多くの資源は数百万年程度の寿命があり、理科系の学者にとっては人類が滅亡するまで存在すると言えるため、無限に近いという認識もあると説明しています。一方で、文化系の人は人類の寿命を考慮せず、有限の資源を少しずつ使えばなくなるという考えを持つため、この点で意見の対立があると述べています。
さらに、武田氏は、廃棄物の学者(ゴミ学者)がこの時期に初めて社会に登場したことも、リサイクルへの関心を高める上で影響があったと指摘しています。しかし、これらの学者は熱力学や量子力学といった基礎科学の知識が不足している場合があり、エントロピーなどの概念に基づいた議論ができないため、混乱が生じたとしています。
また、NHKが高齢の女性の経験談を放送するなど、科学的な根拠に基づかない情報が広まったことも、社会の混乱を招いた要因の一つとして挙げられています。武田氏は、100歳程度の高齢の女性は江戸時代のことを知らないため、経験に基づいた話が必ずしも事実を反映しているとは限らないと指摘しています。
加えて、ヨーロッパがリサイクルを進めているという認識が広まり、日本もそれを見習うべきだという意見が出ましたが、武田氏の調査によると、ドイツの最大のリサイクル率は8%であり、それ以上になったことはないとされています。日本の専門家がヨーロッパのリサイクル工場を見学しても、それはごく一部の例外的なケースであり、ヨーロッパのゴミ処理の主流は埋め立てであると指摘しています。日本は湿度が高いため焼却が主流であり、ゴミ処理の習慣が大きく異なることが、誤解を生む原因になったとしています。
このように、資源の枯渇への危機感、資源有限説の広まり、廃棄物問題の専門家の登場、メディアの影響、そしてヨーロッパのリサイクル状況に関する誤解などが複合的に作用し、リサイクルが社会的な関心事となっていったと言えます。
リサイクル率の公表値は何を示しているのか。
武田氏によれば、リサイクル率の公表値は、実際に資源が再利用されている割合を示しているわけではありません [4, You]。現在の日本の法律では、廃棄物がリサイクル工場として指定された場所に何らかの方法で持ち込まれた時点で、「リサイクルした」と認定されます。
つまり、公表されているリサイクル率は、
リサイクル工場に搬入された廃棄物の割合を示している [4, You]。
その廃棄物がその後、実際にリサイクルされ、新たな製品の原料などとして利用されているかどうかは問われません。
リサイクル工場に持ち込まれた後、焼却されたり、最終的に再資源化されなかったりする場合でも、その時点でリサイクル率としてカウントされる可能性があります [4, You]。
武田氏は、例として「リサイクル率が60%」という数字を挙げていますが、これは「60%がリサイクル工場に持ち込まれた」という意味であり、「60%がリサイクルされた」という意味ではないと強調しています。また、リサイクル工場は、リサイクルできると称して運ばれてきた廃棄物に対して、重量あたりで補助金(税金)を受け取ることがあり、その後、工場の裏で焼却している場合もあると指摘しています。しかし、リサイクル率としてはカウントされているため、実態とは異なる数値が公表されている可能性があると言えます [4, You]。
このように、リサイクル率の公表値は、廃棄物がリサイクル処理の最初の段階に入ったことを示すに過ぎず、その後の実際の再資源化の状況を反映しているとは限らないという点が、武田氏が指摘する重要な点です [4, You]。
心配事の増加は人の気分にどう影響するか。
武田氏の友人の医師(東大医学部出身)によれば、人間は抱える心配事の数が多くなると気分が落ち込みやすくなるとされています。具体的には、5つ以上の心配事がある状態が続くと、人は気分を害しやすくなるとのことです。
そのメカニズムについて、医師は次のように説明しています:
心配事は頭の中で常に巡っているため、脳内の神経細胞と神経細胞の間で情報を伝達するシナプスで使用される化学物質が不足してしまう。
これは発達障害のメカニズムと類似している。
武田氏は、具体的な例として以下の点を挙げています:
4月病: 新しい環境(クラス替え、入社、異動など)によって、従来の生活で抱えていた2、3個の心配事に加えて、新たに5つ程度の心配事が加わることで、全体で7つ程度の心配事を抱えることになり、耐えきれなくなって気分が落ち込む。
女性のうつ病との関連: 一般的に女性は男性よりも多くの心配事を抱える傾向があり、それがうつ病を発症する人が多い一因ではないかと推測しています。男性の場合、一度に考える心配事が少ないため、比較的気分が安定していることが多いとしています。
そして、武田氏は、リサイクルが主婦層の心配事を増やす可能性を指摘しています:
分別の日や資源ごみの種類など、リサイクルに関する細かなルールを覚えることや、きちんと分別しなければならないというプレッシャーが、主婦にとって新たな心配事の種となり得る。
心配事の増加は、人々の気分を落ち込ませ、幸福感を損なう可能性があるため、武田氏はリサイクルに対して否定的な見解を示しています。
したがって、心配事の増加は、脳内の化学物質のバランスを崩し、精神的な負担を増大させることで、人の気分を悪化させると考えられます。
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